【サステナビリティ×酪農】 NZ放牧酪農で人にも環境にもサステナブルな酪農を実現

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ニュージーランド政府公認プロジェクト主催 放牧酪農WEBセミナー Vol.5 開催報告

ニュージーランド乳業最大手フォンテラの日本法人であるフォンテラジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:斎藤 康博)は、ニュージーランド北海道酪農協力プロジェクト主催のオンラインセミナー「放牧酪農WEBセミナーVol.5」を2022年5月16日(月)11:00‐12:30に開催致しましたことをご案内いたします。

今回も業界関係者、酪農家、新規就農者等約40名に参加いただきました。5回目となる今回のセミナーではフォンテラの株主酪農家であるジェームス スチュアートさんとオンラインでつなげ、スチュアートさんの農場「スチュアートデイリーランド」の説明や取り組みに加え、どのようにサステナブルな酪農を実現させているか等の紹介がありました。特に、農場で働く人の環境を考えることがサステナブルにつながるといった考え方や、温室効果ガス排出量を減らすために、ニュージーランドの酪農家があらゆる農場データを取得・提出する取り組みなど、今後の日本の酪農にも影響を及ぼす気付きを与える内容でした。

■農場運営で最も大切にしているものは「人」

「スチュアート農場では、人、環境、家畜福祉、商品の品質を大切にしている」とスチュアートさんは言います。中でも一番大切にしているのは人(農場で働く従業員)で、放牧酪農の場合は特に、牛や土地、牧草の管理を人が担うことになるからだと説明しました。

コミュニケーションは最も重要で、「メッセージングアプリなどのコミュニケーションツールを使用し従業員間の円滑なコミュニケーションを心掛け、共に学ぶ姿勢を大切にしている。従業員に対して高い給与を支払うことや、十分な休みを取得させることも重要視している」と説明。笑顔で業務に取り組む従業員の写真が紹介され、参加者からは「スタッフの皆さんが良い顔をされていますね」とのコメントもあり、従業員の勤務体制等に関する質問もありました。

所得向上や効率化などを通し従業員のモチベーションを向上させ、満足度を上げることも、コスト管理や持続可能な酪農へつながる要素となるようです。

 

■農場管理、環境対策もメジャー、モニター、マネージメントで効率よく実施

「放牧酪農では、常に変化する農場に対応していくことが重要。」とスチュアートさんは言います。

牧草や牛の管理のみでなく環境対策でも同様で、「農場に入ってくるもの、出ていくものを自分たちで把握、分析し理解をすることが重要。」と言います。

温室効果ガス排出量は現在ニュージーランドで最も話題となるトピックの一つですが、農場環境プラン(FEP)*1で焦点を当てている項目の一つです。FEPはそれぞれの農場独自のもので、現時点で強みを持つ分野や優先して改善措置を講じるべき分野を特定しています。ニュージーランドの酪農家はあらゆる農場データをFEP策定のために提出します。

フォンテラでは、ニュージーランドの株主酪農家たちが自らの農場に応じた優先課題に焦点を当てながらFEPを策定するための支援を継続しており、2025年までに100%の導入を目指しています。

 

【ニュージーランド北海道酪農協力プロジェクトとは】

日本の酪農の収益性と持続可能性に貢献することを目標に、ニュージーランドの放牧酪農のノウハウを活かし北海道内での放牧酪農の可能性を調査するプロジェクト。

2014年にスタートしたこのプロジェクトは、ニュージーランド政府、ファームエイジ株式会社、フォンテラジャパン株式会社3者の官民共同プロジェクトで、北海道庁およびホクレン農業協同組合連合会の協力のもとで行われています。

 

【ニュージーランドの酪農がサステナブルな理由】

ニュージーランドでは「放牧酪農」が主流です

― 土、草、牛の循環サイクル ―

 

▼放牧割合約97%

酪農といえば、牛たちが緑の牧草地でのんびりと草を食む姿をイメージする方が多いかと思います。牛たちは牧草地を移動し草を食べ、糞尿は土の中の微生物や虫が分解し土に還っていきます。そしてまた、そこから良質な牧草が育ちます。

そんな循環型の「放牧酪農」がニュージーランドのほとんどの農場で行われています。

フォンテラの農場でも、牛たちが牧草地で過ごす割合は約97%*2。他のどの国の牛よりも長い時間を牧草地で過ごしています。

▼グラスフェッド率約96%

冬の寒さや夏の暑さが厳しいところでは一年を通して放牧することは難しい場合もありますが、ニュージーランドは放牧酪農を行うことができる温暖な気候に恵まれた数少ない国の一つです。また、ニュージーランドの肥沃な大地や十分な日照時間、降水量のおかげで、他の国に比べて少ない肥料で良質な牧草を育てることができます。穀物飼料を輸入し酪農業を行う国に比べると少ないカーボンフットプリントでの酪農が可能です。

放牧酪農で育てられた牛からとれる生乳(グラスフェッドミルク)は、一般的に穀物飼料で生育した乳牛からとれる生乳に比べ、より多くの共役リノール酸(CLA)やβ-カロテン、ビタミンDが含まれていると言われています。フォンテラの農場でのグラスフェッド率は96%*3です。

 

▼GHG排出量は世界平均の約1/3

主要生乳生産国18か国を対象にした調査によると、ニュージーランドの酪農場での温室効果ガス(GHG)排出量が一番少なく、世界平均の約1/3だという調査結果が出ています*4

ニュージーランドには気候や放牧主体の酪農システムといった自然の優位性がありますが、生産性と効率性を可能な限り高めることは、酪農家の懸命な努力が大きく作用します。ニュージーランドの酪農家は、少ない資源からより多くのものを生産するために精度を高めた放牧酪農を行っており、その結果、過去25年ほどの間に農場における生物由来のGHG排出量を約20%削減しました*5

 

※「グラスフェッド」の定義には国際的な統一規格はありません。このため、フォンテラは独自の基準「The Fonterra Grass and Pasture Fed Standard」を設け、グラスフェッドの水準を管理しています。この基準は第三者機関(AsureQuality)の認証を受けています。(AsureQualityはニュージーランド政府が保有する、独立の適合性評価機関です。)

 

*1フォンテラサステナビリティレポート 2020 P40

*2搾乳時間を除いた時間のうち、牧草地で過ごす割合。年間平均97%を牧草地で過ごします。残りの3%の時間は、給餌や休息エリアで過ごします。

*3消費量ベースでの牧草飼料割合の平均値。一部補助飼料を与えることがあります。牧草は、牧草サイレージ、乾草、飼料作物(主にマメ科およびアブラナ科植物)を含みます。牧草以外の飼料は、乳濃縮物、コーンサイレージ、パーム核搾りかすを含みます。

*4Dairy NZ  New research shows New Zealand dairy farmers have the world’s lowest carbon footprint – at half the emissions of other international producers.

*5フォンテラサステナビリティレポート2020  P.45